成長期におけるバスケットボールの障害予防について
- 2025年5月7日
- スタッフブログ
こんにちは、おかだ整形外科スポーツ・リハビリクリニック理学療法士の坂田潤弥です。
今回は、私がトレーナーとして帯同しているバスケットボールにおける障害予防についてお話しします。
バスケットボールは、スピーディーなスポーツであり、身体を大きく動かすため、怪我のリスクも高い競技です。特に中・高校生にとっては成長段階であり、怪我が将来に与える影響も大きく、怪我の予防と早期の対応が重要です。バスケットボールにおける怪我の種類とその予防法、そして怪我が発生した場合の対応について詳しく解説します。
バスケットボールで起こりやすい怪我
⚫️捻挫
捻挫は、バスケットボールのような激しい動きが伴うスポーツでは非常に多い怪我です。特に足首の捻挫が多く見られます。ジャンプ後の着地や素早い方向転換、相手との接触時に足を不自然に捻ってしまうことが原因です。足首だけでなく、膝や腰など他の部位でも捻挫が発生することがあります。捻挫は靭帯損傷であり、軽視すると後遺症が残る恐れがあるため、適切な治療が必要です。
⚫️肉離れ
肉離れは、筋肉が過度に引き伸ばされたり、急激に力が入った時に起こる怪我です。ダッシュやジャンプ、急な方向転換は筋肉に大きな負担がかかります。特に太もも裏やふくらはぎの筋肉が肉離れを起こしやすい部位です。
⚫️膝の怪我
膝の怪我もバスケットボールでよく見られます。特に前十字靭帯損傷は、ジャンプ後の着地や急な方向転換で膝に強い力がかかることで発生します。前十字靭帯損傷は回復に時間がかかり、断裂していると手術療法になる場合もあり、予防が非常に重要です。その他には、半月板損傷や内側側副靱帯損傷なども多いです。また、成長期ではオスグットシュラッター病や膝蓋腱炎(ジャンパー膝)など、太もも前の筋肉の硬さによって引き起こされる怪我もあります。
⚫️下腿の怪我
脛骨過労性骨膜炎(シンスプリント)はオーバーユースの1つで、走る、飛ぶなどの激しい運動を繰り返し行っていると脛骨の骨膜が炎症を起こし、痛みが生じます。シンスプリントを放置すると、疲労骨折に移行する可能性があります。
⚫️指の怪我
ボールを受け取る際やパスをする際に、指に強い衝撃が加わることがあります。特に指がボールにぶつかったり、相手と接触した際に指の骨折や脱臼が発生しやすいです。
⚫️腰痛
バスケットボールでは素早い動きやジャンプ、急な方向転換が求められるため、腰に負担がかかりやすいです。これが腰痛や筋肉の緊張を引き起こし、長期間のプレーに支障をきたすことがあります。また、成長期では過度な体幹の伸展などで、何度も同じ動作を繰り返すことによって腰痛分離症になることも多いです。
怪我の予防方法
⚫️ウォーミングアップとクールダウン
怪我を予防するためには、プレー前のウォーミングアップとプレー後のクールダウンが非常に重要です。ウォーミングアップを怠ると、筋肉や関節が十分に準備できず、怪我のリスクが高まります。ウォーミングアップの効果は、全身をゆっくりと温め、筋肉や関節を柔軟にすることで怪我のリスクを減らします。また、クールダウンの効果は、運動後に筋肉を伸ばしてリラックスさせることで、筋肉の緊張を緩和し、筋肉痛や怪我を防ぎ疲労回復を促進します。
⚫️ストレッチ
ストレッチを行うことで、筋肉や腱の柔軟性を保ち、突発的な動きによる肉離れや捻挫を防ぐことができます。特に下半身(太もも前、太もも後、ふくらはぎ)のストレッチが効果的です。
⚫️適切なシューズの選定
バスケットボールは、足元が重要です。適切なシューズを選ぶことで、足首や膝への負担を軽減し、捻挫などのリスクを減らすことができます。扁平足の方は足のアーチを高くするインソールを入れたり、衝撃吸収機能のあるシューズを選ぶと良いです。
⚫️筋力トレーニング
バスケットボールはコンタクトの多いスポーツです。筋力トレーニングによって、体全体の筋肉を強化し、プレーに必要な筋力や体力を高めることができます。特に体幹や下半身の筋力を強化することで、ジャンプ力や俊敏性が向上し、怪我のリスクを減らすことができます。
※ 当クリニックのインスタグラムにて、筋力トレーニングの方法をご紹介していますので、ぜひご覧下さい!
⚫️技術の向上
基本的なバスケットボールの技術を習得することも怪我の予防に繋がります。例えば、正しいシュートフォームやボールの持ち方、パスの仕方を学ぶことで、無理な体勢や動きによる怪我を防ぐことができます。
怪我が発生した場合の対応
怪我が発生した場合、早期の対処が重要です。以下の方法を守ることで、怪我の回復を早め、さらなる悪化を防ぐことができます。
⚫️P.O.L.I.C.E処置
以前は、RICE処置が怪我の応急処置で主流でしたが、近年では、POLICEが広く用いられている方法です。
Protection (保護)
・怪我をした部位に更なる損傷から受けることから保護します。
Optimal Loading(適切な負荷)
・組織の修復を促し、怪我からの回復を早めるために、患部に適切な負荷をかけます。専門家の判断のもと行いましょう。
Ice(氷冷)
・怪我をした部位に氷を当てて、腫れや炎症を抑えます。1回につき15〜20分程度、1時間おきに繰り返し行います。
Compression(圧迫)
・包帯などで軽く圧迫して腫れを防ぎます。
Elevation(挙上)
・怪我をした部位を心臓より高い位置に保つことで、腫れを抑える効果があります。
⚫️整形外科への受診
症状が悪化したり、熱や腫れ・痛みが改善しない場合は、早期に医師の診察を受けることが大切です。特に骨折や靭帯損傷などが疑われる場合は、専門的な治療が必要です。
当クリニックでの対応
①スポーツドクターによる診察
②理学療法士によるメディカルリハビリテーション
③アスレティックトレーナーによるアスレティックリハビリテーション
当クリニックでは、各スポーツに特化したアスレティックリハビリテーションを行なっています。アスレティックリハビリテーションとは、スポーツ選手を対象としたリハビリテーションです。怪我からの早期復帰やパフォーマンスの向上を目的として行い、競技復帰に向けスポーツに必要な運動能力を回復させ、競技動作の評価や再発予防のアドバイスを行います。「怪我した時よりレベルアップした状態」で復帰できるように、スポーツドクターと理学療法士、アスレティックトレーナーで連携しながらリハビリテーションを進めています。
まとめ
バスケットボールは、怪我のリスクも高いため、事前の予防が非常に大切です。予防するためには、ウォーミングアップやストレッチ、適切なシューズの選定、そして技術の向上が必要となってきます。万が一、怪我が発生した際には、適切な応急処置を行い、早期に医師の診察を受けることが回復を早めることに繋がります。保護者の皆様におかれましては、子どもたちが安全にプレーできるよう、怪我の予防と早期対応を意識し、サポートしていただければ幸いです。