上腕骨外側上顆炎とは?
- 2025年8月1日
- スタッフブログ
皆さん、こんにちは!
おかだ整形外科スポーツ・リハビリクリニック理学療法士の古賀僚太です。
タオルを絞る時やペットボトルの蓋を開けるときに肘が痛くなったことはありませんか?
今回は、肘関節に多い疾患である「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」についてお話します。
この病名を耳にしたことがない方もいらっしゃると思いますが、原因や対策を知っておくことで、早期回復や予防が可能なので一緒に理解を深めていきましょう。
上腕骨外側上顆炎ってなに?
上腕骨外側上顆炎とは、肘の外側にある上腕骨外側上顆という出っ張った骨の部分に付着する筋や腱の炎症のことを指します。別名テニス肘とも呼ばれ、テニスをしている方に多くみられますが、実際にはテニスをしていない方にも起こる疾患なのです。
どうして痛くなるの?
最も多い原因は、手首や前腕の使いすぎです。上腕骨外側上顆には、短橈側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)という筋肉が付着しており、上腕骨外側から手の根元にかけて走行しています。この筋肉に炎症が起きると肘から前腕にかけてズキッとした痛みが出現します。基本的には安静時には痛みはありませんが、症状が進行すると握力低下や肘から腕全体に放散痛が出現し、安静時でもジンジンとした痛みが現れることがあります。
主スポーツでは、テニスやバドミントン、卓球、ゴルフなどの繰り返しのスウィング動作で生じます。また、日常生活では、重たいものを持つことやパソコン操作、マウス操作、タオル絞り、フライパンを振るといった動作で手首や前腕を使いすぎると、短橈側手根伸筋に強いストレスがかかり、筋肉の張り・痛みが出現して日常生活に支障をきたす原因となります。
自分でもできるテストを紹介!
外来診察で行うテストが3つあります。ご自宅でも簡単にできますので試みてください。
まずは、上腕骨外側上顆周囲を押して圧痛があるかを確認しましょう。
①トムセンテスト
肘を伸ばし、手首を反らせたまま、他者が手首に抵抗をかけます。痛みが出現したら陽性です。
②中指伸展テスト
中指を伸ばす際に抵抗をかけ、肘外側に痛みが出現したら陽性です。
③チェアテスト
肘を伸ばした状態で、椅子などを持ち上げ、痛みが出現したら陽性です。
※①~②は他の人の協力が必要ですが③は一人でも行えます。
これらの検査で本疾患が疑われる場合は、レントゲン撮影やエコー、MRI検査で損傷の確認を行います。
治療方法
上腕骨外側上顆炎は多くの場合、保存療法で改善します。日常生活で痛みを伴う動作をできるだけ避け、肘にかかる負担が軽減することによって症状緩和への近道となります。
急性期にはアイシングを行い、炎症が強い場合は1回15分~20分、1日数回アイスパックで冷やします。薬物療法としては、湿布や内服薬を使用したり、肘外側に直接、ステロイド注射を打ちます。また、上腕骨外側上顆へのストレスを軽減するためにテニス肘用のバンドを使用します。しかし、これらだけでは根本的な原因を解消するとは限りません。
根本改善には、理学療法が有効です。原因のところで述べましたように、手首や前腕の使い過ぎにより、ストレスがかかっている短橈側手根伸筋のストレッチングを入念に行います。また、超音波や体外衝撃波を用いた物理療法も行います。手首・前腕の筋力強化、ストレッチング、正しい動作の学習を通じて、痛みの軽減と再発予防が可能です。
自宅でもできる筋力トレーニング・ストレッチングを紹介!
・ストレッチング(手首伸筋群:短橈側手根伸筋)
立位または座位で、患側の手のひらを下に向けて健側の手で指先をつかみ、手首を下方向にゆっくりと曲げていきます。前腕の外側の筋肉が伸びているのを感じながら10秒~15秒を1日3~5セット行います。
・3つの筋力トレーニング
負荷の軽い運動から始めていきます。
①軽い重り(500g~1㎏)を使用し、手首をゆっくり反らして下ろす動作を10回×2~3セット
②テニスボールや柔らかいボールを「握る→離す」を10回×3セット
③ペットボトル(500ml)を持ちゆっくりと回内・回外(ひねる)動作を10回×2セット
※注意点
痛みが強くなる場合は、中止してください。「急いで治そう」とするとかえって長引くことがあります。焦らず無理のない範囲で段階的に進めていきましょう。
まとめ
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)は、使いすぎにより日常の中でよく起こる疾患ですが、正しい知識と対処法を理解すれば再発を予防することが可能です。動作で痛みを感じたら身体の声に耳を傾け、早めに休息・ストレッチングを心掛けましょう。また症状が続く場合は是非、当院にご相談ください。