☆ ちょっとまじめに「手のしびれ」のはなし 手根管症候群②|おかだ整形外科 スポーツ・リハビリクリニック|久留米市の整形外科

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医療コラム

☆ ちょっとまじめに「手のしびれ」のはなし 手根管症候群②|おかだ整形外科 スポーツ・リハビリクリニック|久留米市の整形外科

☆ ちょっとまじめに「手のしびれ」のはなし 手根管症候群②

なんで手根管症候群になるの?手根管症候群の原因は?

首から出て手先まで伸びる神経は、ちょうど首から脇のあたりで正中神経(せいちゅうしんけい)、尺骨神経(しゃくこつしんけい)、橈骨神経(とうこつしんけい)の3本に枝分かれします。手根管症候群は、これらのうち正中神経が圧迫されて生じる病気です。

手首を手のひら側に曲げたときにできる「手首のしわ」の真下から手のひらにさしかかるあたりで正中神経が圧迫されます。この部分には「骨」と「靭帯」に囲まれた「手根管」というトンネルがあり、この狭いトンネルの中で神経が慢性的な圧迫を受けて、しびれや痛み、運動障害を起こします。

この狭いトンネルの中には、指を曲げる9本の腱(屈筋腱)と正中神経が走っています。「指は5本しかないのに指を曲げる腱は9本もあるの?」と意外に思われた方も多いと思います。親指以外の人差し指から小指には指を曲げる筋が2本ずつあるので、2×4+19本という式でこたえがでます。人差し指から小指までに指を曲げる筋が2本ずつ用意されているので、ヒトの指は様々な非常に細かい動作が可能となっています。

ちょっと余談ですが、九州大学の医学生が手術の実習で教官だった私の手根管症候群の手術を見学に来たときのお話しです。「指を曲げる腱は全部で何本あるでしょう?手根管内を通過する腱の数は何本でしょう?」と学生たちにいつも質問をしていましたが、たいていの学生は答えられません。手の解剖に興味をもってもらいたくて整形外科学の試験にはこの問題を毎年出していました(当時の北里大、九大の試験の山です)。

話が脱線しましたが、手根管症候群でお困りの方が非常に多い原因の1つがこの狭いトンネルに9本もの腱を通してしまった事にあります。人間の体の中にはこの用に、「もうちょっと上手に作っていたら、問題がおきなくて済んだだろうに・・・」と思われる「ちょっと作り損なった場所」が何カ所かあります(言い方は悪いですが・・・)。その代表的な場所がこの「手根管」です。もし手根管がもう少し大きなトンネルだったら、手根管症候群でお困りの方は減っていただろうと思います。

指を使いすぎてしまうと、ただでさえ腱が通りにくいトンネル内で腱が何回も行ったり来たりして摩擦を生じてしまうので、腱を包む鞘(さや)に炎症を起こしてしまいます。これが腱鞘炎です。腱に腱鞘炎が生じると鞘(さや)にある腱鞘滑膜が腫れて厚くなってしまい、細い9本だったら何とか通っていた腱たちが、15本分〜20本分くらいの太さに大きくなってしまいます。9人の幼稚園児といっしょにロープで電車ごっこを楽しくしていたはずなのに、急に9人の「おすもうさん」たちと同じ大きさのロープで電車ごっこをすることになったら・・・。きゅうくつで苦しくなることが簡単に想像できると思います。

このようにせまい手根管内で、はれて大きくなってしまった炎症を生じた9本の腱たちによって正中神経が圧迫されて生じるのが「手根管症候群」なのです。