第3回|手根管症候群の症状|初期・中期・進行期の違い
- 2026年4月3日
- スタッフブログ
こんにちは。院長の岡田です。
シリーズでお届けしている「手根管症候群」の解説、第3回目となります。前回は「なぜ起こるのか」という原因について詳しくお話ししました。原因が多岐にわたることを知り、ご自身の生活習慣や体調と照らし合わせて頂けると嬉しいです。
今回は、最も皆様が気になっているであろう「手根管症候群の症状」について解説します。この病気は、放置するとゆっくりと、しかし確実に進行していくのが特徴です。初期・中期・進行期でどのような違いがあるのかを詳しく見ていきましょう。
1️⃣初期症状の特徴:サインを見逃さないために
手根管症候群の始まりは、非常にさりげないものです。最初から激痛が走ることは稀で、多くの方は「なんとなくの違和感」から始まります。
■ 朝方のしびれとこわばり
初期の最も典型的な症状は、朝起きた時に指先がピリピリ、ジンジンとしびれることです。これは、睡眠中に手首が曲がった状態が続いたり、夜間のむくみによって手根管内の圧力が上がったりするためです。面白いことに、手を振ったり指を動かしたりして血流が良くなると、しびれが一時的に消えてしまうため、「疲れかな?」と見過ごされがちです。

■ 特定の指に出るしびれ
手根管症候群のしびれは、親指、人差し指、中指、そして薬指の親指側に現れます。手のひら全体がしびれるように感じても、よく観察すると①「小指だけは全くしびれていない」こと②「薬指の親指側半分と小指側半分で感覚が異なる」ことの二つに気づくはずです。これが、首の病気などと見分ける初期の重要なサインとなります。
2️⃣症状が進行するとどうなるか(中期)
初期のサインを見逃して適切な処置を行わないでいると、症状は「中期」へと移行します。この段階になると、日常生活の中で「困ったな」と感じる場面が増えてきます。
■ 昼夜を問わないしびれと痛み
朝方だけだったしびれが、日中も持続するようになります。特に、自転車のハンドルを握る、電話を持つ、新聞を読むといった「手首を一定の角度で保持する動作」を数分続けるだけで、強いしびれや痛みが生じるようになります。夜中に痛みやしびれで目が覚めてしまい、睡眠不足に陥る方も少なくありません。

■ 感覚の鈍さ(感覚障害)
しびれだけでなく、指先の感覚そのものが鈍くなってきます。厚紙を触っているような感覚になったり、指先の細かい感覚が必要な作業が億劫になったりします。
3️⃣痛み・しびれ・筋力低下の違い(進行期)
さらに症状が進行すると、病態は「しびれ」から「麻痺(まひ)」へと変化していきます。ここが非常に重要な分かれ目です。
■ 筋肉の萎縮(いしゅく)
手根管を通る正中神経が限界を超えて圧迫されると、神経が支配している筋肉に力が入らなくなります。具体的には、親指の付け根にある盛り上がった筋肉(母指球筋)が、目に見えてゲッソリと痩せて平らになってしまいます。
■ 「猿手(さるて)」変形
母指球筋が痩せ細ると、親指を他の指と向かい合わせる動作(対立動作)ができなくなります。親指が人差し指と同じ平面上に並んでしまい、人間特有の「つかむ・つまむ」という動作が困難になります。この状態を、医学的に「猿手」と呼びます。この段階では、もはや痛みやしびれを通り越して「手が動かない」という深刻な状態です。

4️⃣日常生活での支障
症状が進行するにつれ、当たり前にできていた動作が困難になります。
・細かい作業の困難: ボタンをかける、縫い物をする、紐を結ぶといった動作が指先の感覚麻痺と筋力低下でできなくなります。
・物を落としやすくなる: 小銭をつまみ損ねたり、お皿洗いの最中に食器を滑らせて割ってしまったりすることが増えます。
・お箸の使用: お箸を上手に操れなくなり、食事が不自由になります。
これらの支障は、単なる身体的な不便さだけでなく、「今までできていたことができない」という精神的なストレスや、自信の喪失にも繋がってしまいます。
5️⃣放置した場合のリスク
手根管症候群を「たかがしびれ」と放置することには、大きなリスクが伴います。
最大のリスクは、「神経のダメージが回復不能になること」です。筋肉が完全に痩せ細ってしまい、神経自体が変性してしまった後では、例え手術をして圧迫を取り除いたとしても、元の筋力や感覚を100%取り戻すことが難しくなります。
「もっと早く相談していれば、飲み薬や装具だけで治ったのに」というケースを、私たちは何度も目にしてきました。しびれは、神経が「助けてくれ」と出している最終警告なのです。
6️⃣まとめ
第3回となる今回は、手根管症候群の症状の進み方について解説しました。
・初期: 朝方のしびれが中心。手を振ると楽になる。小指はしびれない。
・中期: 日中も症状が出て、夜間に痛みで目が覚めることもある。
・進行期: 親指の付け根が痩せ、細かい作業ができなくなる(猿手変形)。
・リスク: 放置しすぎると、治療をしても元通りにならない可能性がある。
もし、ご自身やご家族の症状が「中期」以上に当てはまるようであれば、早急な受診をお勧めします。もちろん、初期の段階で対処できれば、それに越したことはありません。
次回は、ご自身で今すぐ試せる「第4回|手根管症候群セルフチェック」をお届けします。
有名な「ファレンテスト」など、数分でできるチェック方法をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
手の違和感を我慢する必要はありません。当院では、患者様一人ひとりの進行度に合わせて、最適な治療計画をご提案いたします。どうぞお気軽にご相談ください。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。


(初診・再診)