第5回|手根管症候群の治療法|全体像をわかりやすく解説|おかだ整形外科 スポーツ・リハビリクリニック|久留米市の整形外科

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医療コラム

第5回|手根管症候群の治療法|全体像をわかりやすく解説|おかだ整形外科 スポーツ・リハビリクリニック|久留米市の整形外科

第5回|手根管症候群の治療法|全体像をわかりやすく解説

こんにちは。院長の岡田です。

過去4回にわたってお届けしてきた手根管症候群の解説シリーズ、今回は治療の全体像についてお話しします。前回は、ご自宅でできるセルフチェックをご紹介しました。もしチェックで「陽性」の反応が出たとしても、どうぞ過度に心配しないでください。

「しびれがある=すぐに手術」というわけではありません。手根管症候群には、お体の状態や進行度に合わせて選べる複数の治療選択肢があります。今回は、どのような治療法があるのか、その全体像を整理して解説していきます。

1️⃣ 治療法の種類(保存療法・手術療法)

手根管症候群の治療法は、大きく分けて「保存療法(切らない治療)」と「手術療法(切る治療)」の2つに分類されます。

保存療法(切らない治療)

初期から中期の患者様に対して、最初に行われるのがこの保存療法です。

・装具療法(スプリント): 手首を使いすぎないよう固定したり、夜間に手首が曲がらないよう装具を装着して神経への負担を減らします。

・薬物療法: 神経の修復を助けるビタミンB12製剤や、炎症を抑える消炎鎮痛剤を服用します。

・ステロイド注射: 手根管内に直接抗炎症薬を注入し、腱の腫れを引かせて神経の圧迫を速やかに緩和します。

・リハビリテーション: 神経の滑走性を高める運動や、手首に負担のかからない動作指導を行います。

手術療法(切る治療)

保存療法を数ヶ月続けても改善が見られない場合や、すでに筋肉の痩せ(萎縮)が見られる進行期の場合に選択されます。

・鏡視下(内視鏡)手術: 小さな切開からカメラを入れ、神経を圧迫している靭帯を切開して開放します。

・直視下(小切開)手術: 手のひらを数センチ切開し、直接確認しながら圧迫を取り除きます。

・遠位one portal ECTR私が考案した術式で、「再発が少なく」「合併症が少ない」術式です。この術式は、2025年の日本整形外科学会の教育講演会でも紹介され、医師向けの教科書にも掲載されている実績のある術式です。

2️⃣ 症状の程度による治療の考え方

治療法を決定する上で最も重要なのは、「今、神経がどの程度ダメージを受けているか」という評価です。

【軽度(初期)の場合】

「朝方だけしびれる」「たまに違和感がある」といった段階では、まずは徹底した保存療法を行います。手首の使い方の見直しや、夜間の装具固定だけでも、劇的に症状が改善するケースが多々あります。

【中等度(中期)の場合】

「日中もしびれがある」「夜中に痛みで目が覚める」といった段階では、飲み薬に加えてステロイド注射を検討します。注射は即効性が高く、これによって手術を回避できる患者様も少なくありません。

【重度(進行期)の場合】

「親指の付け根が痩せている」「指先の感覚が全くない」といった段階では、保存療法だけでは神経の回復が間に合わない可能性が高くなります。この場合は、神経への圧迫を物理的に取り除く手術療法が最も効果的な選択肢となります。

3️⃣ 治療選択で大切なポイント

治療を選ぶ際に、私が患者様にお伝えしている大切なポイントは、「ライフスタイルとの調和」です。

例えば、「仕事柄、どうしても手首を休ませることができない」という方と、「家事で少し工夫すれば安静にできる」という方では、提案する治療の優先順位が変わります。また、手術を検討する場合も、術後のリハビリ期間や職場復帰のタイミングなどを考慮し、患者様と十分にご相談した上で決定します。

医療従事者側が一方的に決めるのではなく、患者様が納得して治療に取り組めることが、完治への一番の近道だと考えています。

4️⃣ よくある不安や疑問

患者様からよく寄せられる質問にお答えします。

Q.「手術は怖いのですが、必ずしなくてはいけませんか?」

A.  必ずしもそうではありません。多くの場合は保存療法からスタートします。ただし、筋肉の痩せが著しい場合など、「今すぐ手術をしないと、一生麻痺が残ってしまう可能性がある」という状況に限り、強くお勧めすることがあります。

Q.「治療をすれば、しびれは完全に消えますか?」

A.  早期に治療を開始した場合は、完治する可能性が非常に高いです。しかし、重症化してから治療を始めた場合は、圧迫を取り除いても神経の回復に時間がかかったり、わずかにしびれが残ったりすることがあります。

 

5️⃣ 治療は早期対応が重要な理由

手根管症候群の治療において、最も避けたいのは「手遅れになること」です。

神経は長い間圧迫され続けると中身が変性して元に戻らなくなってしまいます。これを専門用語で「不可逆的な変化」と呼びます。筋肉が痩せてから手術をしても、筋肉を動かすための「電気信号」を送る神経自体が傷んでいれば筋肉は元に戻りません。

「まだ動くから大丈夫」「しびれだけだから我慢しよう」という自己判断は危険です。早期に対応すればするほど、治療の期間は短くなり、身体的・経済的な負担も軽く済みます。

6️⃣ まとめ

5回となる今回は、治療の全体像を解説しました。

・治療には「保存療法(切らない)」と「手術療法(切る)」がある。

・初期〜中期は、装具や注射などの保存療法が第一選択。

・進行して筋肉が痩せてきた場合は、手術が必要になることが多い。

・患者様の生活スタイルに合わせて、最適な治療計画を相談して決める。

・神経のダメージが定着する前に、早期に対応することが完治の鍵。

ご自身の手の状態はいかがでしょうか。しびれや痛みは、体からの「SOS」です。そのサインを無視せず、適切なケアを始めていきましょう。

さて、次回はさらに踏み込んだテーマをお届けします。

「第6回|手根管症候群は手術しないで治せる?」

保存療法で治る確率や、再発を防ぐための生活の工夫について詳しく解説します。

毎日使う大切な手だからこそ、無理をさせず、適切なケアを届けてあげましょう。不安なことがあれば、いつでも当院へご相談ください。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。