第6回|手根管症候群は手術しないで治せる? 「手術する」か「手術しない」かの判断の目安|おかだ整形外科 スポーツ・リハビリクリニック|久留米市の整形外科

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医療コラム

第6回|手根管症候群は手術しないで治せる? 「手術する」か「手術しない」かの判断の目安|おかだ整形外科 スポーツ・リハビリクリニック|久留米市の整形外科

第6回|手根管症候群は手術しないで治せる? 「手術する」か「手術しない」かの判断の目安

こんにちは。院長の岡田です。

手根管症候群についての解説シリーズ、第6回目となりました。前回は、手根管症候群の治療法ついてお話ししました。保存療法は、体にメスを入れずに症状を改善させる優れた方法ですが、患者様が最も直面する悩みは「本当に手術しないで治るのか?」という点ではないでしょうか。

今回は、「手術をしない選択ができる基準」と、逆に「手術を検討すべきタイミング」について、判断の目安を整理して解説していきます

1️⃣ 手術が検討される理由

そもそも、なぜ手根管症候群で手術が必要になるのでしょうか。それは、手根管という「物理的なトンネルの狭さ」が原因だからです。

前回のブログで紹介した通り、保存療法は炎症を抑えたり、一時的にスペースを確保したりするのには非常に有効です。しかし、中には骨の変形が強かったり、靭帯が分厚く硬くなってしまっていたりと、飲み薬や注射だけではどうしても圧迫が取り除けないケースがあります。

神経がずっと押しつぶされたままだと、神経細胞そのものが死んでしまい、二度と信号を送れなくなります。そうなる前に、物理的にトンネルの屋根(屈筋支帯)を切り開いて、神経を解放してあげるのが手術の目的です。つまり、手術は「神経を救い出すための最終手段」なのです。

2️⃣ 手術を避けたい人が多い理由

診察室で手術のお話をすると、多くの方が「できれば避けたい」とおっしゃいます。その理由は主に以下の3つに集約されるようです。

・仕事や家事への影響: 「手術をしたら何週間も手が使えないのではないか」「仕事を長期で休まなければならないのではないか」という不安。

・痛みや傷跡への恐怖: 「手のひらを切るのは痛そう」「傷跡が残って日常生活に差し障るのでは」という心配。

・手術後の経過への疑問: 「手術をしても治らなかったらどうしよう」という不信感。

現在の外科手術は進化しており、内視鏡を用いた数センチの小さな切開で済むものも増えています。しかも当院では1.5cm程の傷で、切開部位の局所麻酔で、平均10分程で終了します。しかし、日常生活に直結する「手」だからこそ、慎重になるのは当然のことと言えるでしょう。

3️⃣ 手術しない選択が可能なケース

では、どのような状態であれば「手術をしない(保存療法を続ける)」という選択が可能なのでしょうか。目安としては以下の条件が挙げられます。

筋肉の痩せ(母指球筋の萎縮)がない

親指の付け根のふくらみがしっかりしており、筋肉が痩せていないのであれば、まだ神経のダメージは回復可能な範囲にあると考えられます。

しびれが一時的、または波がある

「朝だけしびれるけれど、動かせば消える」「日によって調子が良い時がある」という状態は、神経が完全に死んでいるわけではなく、血流や炎症のコントロールで改善する余地が多分にあります。

電気生理学的検査(神経伝導速度)の結果が軽度

病院で行う精密検査で、神経の中を流れる電気のスピードが極端に遅くなっていない場合は、保存療法で様子を見る価値が十分にあります。

原因が一時的なものである(妊娠・出産など)

ホルモンバランスの影響や一時的なむくみが原因の場合は、時期が過ぎれば自然に改善することが多いため、手術を急ぐ必要はありません。

4️⃣ 手術を先延ばしするリスク

一方で、「手術したくない」という思いだけで決断を先延ばしにすることには、大きなリスクが伴います。

最大の懸念は、「手遅れになること」です。

神経が高度に圧迫された状態で何年も経過してしまうと、手術をして圧迫を取り除いても、神経自体が変性してしまっているため、しびれや麻痺が一生残ってしまうことがあります。特に、親指の付け根が凹んで「猿手」の状態になってからでは、手術の目的が「治すこと」ではなく「これ以上悪くしないこと」になってしまう場合もあります。

「いつか治るだろう」という希望的観測で時間を浪費することは、将来的な手の機能を担保する上では非常に危険な賭けとなります。

 

5️⃣ 専門家と相談する重要性

「手術するか、しないか」という判断は、決して患者様お一人で悩むべきことではありません。

当クリニックでは、最新のガイドラインや検査データ、そして何より患者様が「生活の中で何を一番大切にしたいか」を考慮して、一緒に治療方針を組み立てます。「仕事があるから、まずは注射で半年粘りたい」という要望も、「早く確実に治したいから、最初から手術を検討したい」という要望も、どちらも正解です。

大切なのは、自分の状態が今どの段階にあるのかを正しく把握し、納得した上で「期限を決めた治療」を行うことです。

手術治療は、①1.5cmの小さな傷で、②切開部位のみの局所麻酔で、③約10分で終了します。私が考案したこの手術法で700件以上の症例を経験してきました。心配しすぎて手術を先延ばして「治るチャンス」を失わないようにしましょう。実は思っているほど簡易な方法で治る可能性があること知って頂けたら幸いです。

6️⃣ まとめ

第6回となる今回は、手術しない選択ができるかどうかの判断基準を整理しました。

  • 手術は、神経を「物理的な圧迫」から救い出すための手段である。
  • 筋肉が痩せておらず、症状に波がある間は「手術しない」選択肢が有力。
  • 逆に、高度な筋力低下がある場合は、先延ばしにすると回復不能になるリスクがある。
  • 自身のライフスタイルに合わせて、医師と「期限」を決めた治療計画を立てることが重要。

「手術」という言葉に身構える必要はありませんが、自分の手を一生使い続けるために、今、何が最善なのかを一緒に考えていきましょう。

次回は、「第7回|手根管症候群に対する手術治療について」というテーマで、手根管症候群に対する術式の種類と解説をしていきます。その中で、私が考案した術式、「遠位one portal ETCR」についても解説していきます。

皆様の手がいつまでも健やかに動くよう、これからも役立つ情報を発信してまいります。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。