第7回|手根管症候群に対する手術治療について|術式の種類と解説
- 2026年10月4日
- スタッフブログ
こんにちは。院長の岡田です。
約4ヶ月ぶりの投稿となりましたが、手根管症候群についての解説シリーズも第7回目を迎えました。前回は「手術をするか、しないか」という判断の目安について詳しくお話ししました。納得のいく治療法を選ぶことが、完治への第一歩であることをご理解いただけたかと思います。
今回は、「手根管症候群」に対する手術治療について詳しく解説していきたいと思います。症状が進行して日常生活に支障をきたす場合や、筋肉の萎縮(親指の付け根の痩せ)が見られる場合には、手術治療が検討されます。
1️⃣ 手術治療の意義
手術治療の最大の意義は、神経の圧迫を物理的に解除することで、進行性の神経障害を食い止め、手の機能や感覚を回復させることです。保存療法では痛みを和らげることはできても、圧迫そのものを解消することはできません。長期間神経の圧迫が続くと、神経の回復が難しくなることもあります。そのため、適切なタイミングで手術を選択することは、患者様のQOL(生活の質)を大きく向上させるために非常に重要です。
2️⃣ 手術手技の種類とそれぞれの利点と欠点
手根管症候群の手術には、主に「大きな切開を用いた(今まで行われてきた)手根管開放術」、「内視鏡下で行われる手根管開放術」、「小さな切開を用いた手根管開放術」の3種類があります。それぞれの特徴について解説します。

・大きな切開を用いた手根管開放術
手のひらを大きく切開し、医師が直接視野で手根管(屈筋支帯)を確認しながら手術する方法です。
利点: 確実な視野が確保できるため、安全性が高く、神経の圧迫原因を直接確認しやすい点です。
欠点: 皮膚や皮下組織を大きく切開するため、手術後の傷の痛みや、手のひらのつっぱり感が残る期間が長くなる傾向があります。また、日常生活への復帰に時間がかかる場合があります。

・内鏡視下で行われる手根管開放術
小さな切開部から内視鏡を挿入し、モニターを見ながら手根管を切開する方法です。
利点: 傷口(2箇所)が小さく手のひらへの侵襲が少ないため術後の痛みが少なく、早期の社会復帰が可能です。
欠点: 視野が限られるため高い技術と経験が必要です。また、圧の高い手根管内に太い器具を挿入することで一時的に神経を痛めてしまう可能性もあります。
・小さな切開を用いた手根管開放術
手のひらを小さく切開し、医師が直接視野で確認しながら切開する方法です。
利点: 傷が手のひらの中にとどまるため、整容性に優れ、痛みも少なめです。
欠点: 器具が届きにくい手前側(近位)の操作が「直接目で確認できない状態(ブラインド)での処置」になりやすく、靭帯の切り残しによる除圧不足や予期せぬ組織損傷のリスクがあります。
3️⃣ 当院で行なっている鏡視下手根管開放術(遠位one portal ETCR)について
当院では、これら従来法の欠点を克服し患者様への負担を最小限に抑えるために、「遠位one portal ETCR(Endoscopic Carpal Tunnel Release:内視鏡下手根管開放術)」という、私自身が考案した先進的な手術法を採用しております。 この術式は、従来の内視鏡よりもさらに細い内視鏡を導入しています。手のひらに小さな切開(ポータル)を作り、そこからこの高精細カメラを挿入して、顕微鏡のような精密さで隅々まで確認しながら手術が可能となりました。手術時間は局所麻酔下でおよそ15分から20分程度と短時間で済み、日帰り手術で行うことが可能です。

・鏡視下手根管開放術(遠位one portal ETCR)のメリット
※手のひら(物を掴むときに使う重要な部分)を切開しないため術後の手のひらの痛みや違和 がほとんど無く、早期の社会復帰が可能です。
※高精細カメラで確認することで、神経の圧迫原因の「切り残し」を完全に払拭できます。
※従来の内視鏡(7mm)よりも細い内視鏡(5mm)を使用するため、合併症のリスクを最小限に抑えることができます。
※日帰り手術が可能となり、患者様の経済面等の負担が少なくなります。
4️⃣ まとめ
私たちが世界と触れ合い、文化を紡いでいくその大切な手にメスを入れることはとても不安を感じることです。だからこそ、当院は「いかに傷を小さく、いかに確実に治すか」という問いに対して、最新の機器類と熟練した技術で答えを出しています。手根管症候群の症状でお悩みの方は、一人で我慢せず、まずはご相談ください。適切な診断と最適な治療法で皆様の健やかな毎日をサポートさせていただきます。
さて、次回はとうとう最終回「第8回|手のしびれの原因とは?手根管症候群との違い」というテーマでお届けします。
「手がしびれるのは全部手根管症候群なの?」「首の病気や肘の病気とはどう見分けるの?」といった、よくある疑問に答えていきます。
皆様の手がいつまでも健やかに動くよう、これからも役立つ情報を発信してまいります。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。


(初診・再診)